「秋山郷」紅葉撮影ガイド 〜錦秋の天池と夏の終わりを告げる苗場山の池塘群
苗場山北西麓に位置する秋山郷は長野県栄村と新潟県津南町にまたがる中津川沿いの地域の総称であり、日本の秘境100選にも選ばれています。
西を鳥甲山、東を苗場山に囲まれた河岸段丘が織り成す複雑で険しい地形はまさに陸の孤島。2014年12月には苗場山麓ジオパークとしても認定されました。また苗場山や鳥甲山への登山起点としても人気があります。
秋山郷には天池や布岩、蛇淵の滝といった山間部特有の美しい風景が広がっており、特に紅葉に彩られた時期は一見の価値があります。秋山郷へは津南から入る新潟ルートと奥志賀から入る信州ルートの2つの選択肢があります。
今回は奥志賀のカヤノ平から紅葉美しい雑魚川林道経由で秋山郷を訪れました。加えて晩夏に訪れた苗場山の池塘群も紹介します。
信州 奥志賀林道線で秋山郷へ
長野県 志賀高原の蓮池から奥志賀林道線を北上し、カヤノ平手前から雑魚川林道を経由して秋山郷を目指しました。
志賀高原から奥志賀高原線を来た場合は秋山郷と書かれた標識を右折して雑魚川林道に入ります。
秋山林道すなわち雑魚川林道の始まりです。終点の切明までは約11kmの行程です。
なお雑魚川林道は例年だと11月7日頃に、奥志賀林道は11月下旬から翌年5月下旬まで冬季通行止めとなります。
雑魚川林道は道幅も広くしっかり舗装されているので安心して走ることができます。道中には大滝やハーモニカの滝といった景勝地もあります。
所々駐車可能なスペースが出てきますので気に入った場所で写真を撮ったり休憩したり出来ます。山側の植生は殆どが広葉樹です。
この日はブナ林の上品な紅葉が秋空に映え、すがすがしい空気に包まれていました。
道路上の無名滝もなかなか綺麗です。
林道沿いには沢状の地形が多く見られます。これらの沢状地形には特に漆やナナカマドが群生していて、赤の強い紅葉が周囲のブナの黄葉にいいアクセントを与えていました。
林道終点に着きました。今回は右折して切明温泉に向かいます。なお屋敷方面に行きたい場合は左折します。
先程の分岐から約3kmで切明温泉に到着します。河原に降りて自分で温泉を掘って入浴もできます。
駐車場には約25台停めれます。また水洗の公衆トイレがあります。
夫婦滝の紅葉
近くの橋の上からは上流方向に夫婦滝を望めます。写真は140mmの焦点距離です。次は天池を目指します。
切明温泉から国道405号経由で約8km進むと上野原の「のよさの里」の看板が出てきます。
なお移動距離を短縮したい場合は途中小赤沢方面と書かれた標識に従うと良いでしょう。
看板を右折して約1kmで「のよさの里」が右手に出てきます。ここから天池までは450mの距離です。
天池の駐車場に停めれない場合は最悪この「のよさの里」の駐車場に停めて歩くことになります。
右手に天池が見えてきました。
右の赤枠が駐車場で左の赤枠がメインの撮影場所です。なお今いる位置に駐車すると自分の車が写ってしまいます。
駐車スペースは拡張されてバスが駐車できるようになりました。ただし奥に停めると出れなくなる可能性があるので実際は10台程度の駐車場でしょう。
またここを真っ直ぐ行くと苗場山三合目登山口に着きます。
天池
秋の見頃を迎えた天池です。小さくて非常に静寂な池です。
遠景の鳥甲山と湖畔沿いのダケカンバの黄葉が鏡のような水面へ映り込み、非常に幻想的な雰囲気を醸し出していました。
年によっては初冠雪した鳥甲山と天池の紅葉を同時に見ることもできます。
10月中旬から下旬にかけてが見頃です。8時半には池全体に光が差し込み10時半には逆光となります。
さらに詳しく言うと例年の見頃は10月20日前後ですが11月上旬まで楽しめます。
理由としては池周辺にはダケカンバ、ブナ、カラマツが混在しており色付くタイミングがそれぞれ違うからです。また遅いほど鳥甲山の初冠雪も期待できます。
天池の左隣にも池があり整備されて眺望が非常に良くなりました。ここからは鳥甲山の眺めが良好です。
湖畔の紅葉も綺麗です。
次は布岩を目指します。先程の「のよさの里」の看板から約2km下ると屋敷地区の分岐が出てきますので左折します。
少し下ると橋が出てきます。その橋の上から見た中津川源流部の景観も綺麗です。
ブナやケヤキの控え目で落ち着いた紅葉が印象的でした。
屋敷地区の幻の滝
また大雨が降った後は右斜面に幻の滝も出現します。
先程の分岐から屋敷の集落を山側に上っていくと約3kmで志賀高原方向への標識が出てきます。
標識に従いスノーシェッドを抜けてすぐ左折します。丸枠が布岩です。
100m程でまた切明方面に左折します。
するとすぐに撮影場所に着きます。駐車場はありませんので邪魔にならない路肩スペースに車を停めます。
布岩
ここからはこのような形で布岩が見えます。柱状節理が印象的です。
また付近からは苗場山も見る事が出来ます。
さらに300m程行った所にも撮影場所があります。
布岩
ここからはこのように見えます。少しの距離でも印象が変わります。
青い空と秋の紅葉がこの独特な岩肌を際立たせていました。
先程のスノーシェッドの分岐に戻って今度は苗場山ビューポイントに向かいます。
約1.5km程走ると小さなトンネルが見えてきます。
このトンネルの手前を旧道沿いに右に歩いていくと展望スペースがあります。
トンネルをくぐって100m程で右手に6台程駐車可能なスペースが出てきます。ここに駐車すると良いでしょう。
先程の案内板まで戻って徒歩で移動します。
約5分距離にして250m歩くと展望が開けた場所に着きます。ここが苗場山ビューポイントです。
ここからは苗場山と小赤沢の集落や棚田が一望できます。
午後のポイントですが12時くらいが影が少なくて良いでしょう。苗場山が多く冠雪してくれていればさらに絵になります。
別の日に月明かりで撮影してみました。
11月上旬は山麓が紅葉して苗場山が冠雪している絵を狙えますが20日を過ぎるとスタッドレスが必要です。
次は屋敷の分岐まで戻って蛇淵の滝に向かいます。
屋敷の分岐から約1km下ると右手に神社の看板が出てきます。観光案内所もあるので寄っていきます。
案内所内には水洗トイレもあります。また隣の神社では水の補給も可能です。
案内板もありますので情報を確認すると良いでしょう。
先程の小赤沢の観光案内所から約2.2kmで大赤沢の蛇淵の滝に着きます。目印は民芸品店の山源さん。
近くに公共の駐車場がありますが乗用車は6台程しか停めれません。山源さんの駐車場には約20台駐車可能で観光のみでも停めてよいそうです。感謝です。
山源さんの隣に蛇淵の滝への入口があります。
約5分程歩くと展望台に着きます。展望台は非常に狭いので人が少ない時を見計らって三脚をセットするしかありません。
蛇淵の滝
蛇淵の滝です。紅葉に囲まれて二段に流れ落ちる様子が印象的でした。
上段の滝だけを切りとってみました。構図の難しい滝というのが第一印象でした。
次は天池まで戻って苗場山三合目登山口に向かいます。
天池から5km走ると小赤沢への分岐が出てきますので真っ直ぐ進みます。なお天池から1.7kmの地点に段差の大きな場所があるので注意してください。
登山口へと続く林道も綺麗です。
先程の分岐から2kmで苗場山三合目駐車場に到着します。登山道はこの奥にあります。
駐車場は非常に広く200台は停めれそうです。またトイレも完備されています。
苗場山三合目登山口は苗場山への最短ルートとなります。
池塘の楽園 日本百名山「苗場山」
ここからは8月に苗場山を訪れた時の様子を紹介します。
最短ルートである秋山郷小赤沢の三合目登山口から登りました。ゆっくり登ること約2時間半、7合目の急登を過ぎて8合目と9合目の間に来ると一気に視界が開けます。
木道を歩いて振り返ると9合目池塘群の向こうに鳥甲山が望めます。
9合目付近から南を見ると赤倉山の稜線が望めます。美しい池塘がその水面に青空を映しこんでいました。
されど山の夏は短く、もう草紅葉が始まりつつあります。ここから山頂までは約30分の行程です。
山頂に着きました。山頂付近からは苗場山の雄大な高層湿原を俯瞰できます。
また木道が整備されているので快適に池塘を散策できます。
天上に広がる大地に熊笹とハイマツが織り成す緑のグラデーション。夏の空気を残しつつも秋の足音が聞こえてきそうです。
湿原を散策していると西側から雲が湧き上がってきました。
山頂湿原の周りは切り立った深い谷に囲まれているので午前の遅い時間には四方を雲に囲まれて幻想的な空間に包まれることもあります。
苗場山は新潟県と長野県にまたがる雄大な山ですが湿原のほとんどは信州側に位置しています。
よって秋山郷からアプローチすると、行きと帰り、違った光線状態で湿原や池塘の風景を見ることができます。美しい新緑を見るには梅雨明け直後、完全な草紅葉を見るには9月中旬がよいでしょう。
今、苗場山は夏の終わりを迎えようとしていました。
前倉橋
帰りは国道405号を下って津南に向かいます。蛇淵の滝から1km程下ると前倉橋が出てきます。
隣のへいけ茶屋さんの駐車場に停めさせてもらってお土産を買いつつ撮影しました。
紅葉の中津川
橋の上からは中津川の紅葉が綺麗に見えます。見頃は11月初旬です。
ここから津南までは19kmの距離です。へいけ茶屋から3kmと萌木の里からの5kmの区間は特に道幅が狭いので注意して運転しましょう。
秋山郷は山の上部はダケカンバが多く中腹より下部はブナやクヌギ、ミズナラが多い植生となっています。そのため10月上旬から11月上旬まで長い間紅葉を楽しむ事が出来ます。
昔からの原生林を大切にしているからこそこの地域の秋の美しさは秀逸です。秋山郷とはよく言ったものです。植林により杉山に変えてしまった地域ではこのような秋を見る事はもうできません。
鍋倉高原
津南に下りて長野方面に帰る途中、鍋倉高原に寄り道しました。上部に位置する茶屋池の紅葉は例年10月20日ぐらいなので秋山郷と時期が被ります。
茶屋池
茶屋池は朝だけでなく午後の遅い時間帯も撮影に向きます。池の近くには駐車場と無料休憩小屋及びトイレがあります。
夕刻の田茂木池
鍋倉高原の中腹にある田茂木池の見頃は10月末から11月初旬です。上部の茶屋池の見頃が終わっていた場合はここに寄ると良いでしょう。
光ヶ原
茶屋池近くの関田峠を越えて新潟側に少し下ると光ヶ原があります。
ススキの群生が美しい高原で妙高火打山方向に沈む夕日に照らされたススキの野原が黄金色に輝く様は一見の価値があります。
秋山郷周辺のおすすめ撮影スポット
秋山郷紅葉撮影の前後に回れるおすすめ撮影スポットを紹介します。
信州 高山村 「雷滝」
信州高山村の雷滝付近は紅葉時期が秋山郷と同時期になっており、高山村の滝巡りと秋山郷観光のセットは旅行ツアーでも良く目にします。
雷滝は松川渓谷にある滝で滝を裏から見ることができることから別名「裏見の滝」と呼ばれています。松川の激しい水流で滝壺が轟音に包まれます。雷滝の詳しい訪問記は下記をご覧ください。
信州の名瀑「雷滝」撮影ガイド。~新緑から紅葉へ「松川渓谷」光の変化と季節の移ろい
信州 高山村 「八滝」
雷滝と同じ松川渓谷にある八滝は展望台から対岸の岩壁を流れる滝を眺めることができます。段数が八段になっていることから八滝と呼ばれており、紅葉時は駐車場待ちの渋滞が発生する人気撮影スポットです。
長野県上高井郡高山村は長野県の北東部に位置する山村で「日本で最も美しい村」連合に加盟しており、村の面積の8割以上が森林で植生が豊かな場所です。1,900mから900mの標高差があり、牧場、滝、渓谷、山と被写体の種類も様々で、標高ごとに趣の異なった紅葉の絶景を味わうことができます。
高山村の紅葉ガイドは下記記事をご覧ください。
信州・高山村「紅葉」撮影ガイド。〜錦に染まる「日本で最も美しい村」の秋
深い森に包まれた神秘的な「龍ヶ窪」
新潟県津南町の標高450mほどの河岸段丘に位置する「龍ヶ窪」は1974年新潟県自然環境保全地域に指定され、ブナなどで囲まれた神秘的な森の姿を見ることができます。
1日で沼の水すべてが入れ替わるほどの豊富な水量で水が濁ることがありません。「日本名水百選」のひとつに認定されています。
新潟県津南町「龍ヶ窪」名水百選の湧水。〜竜神伝説。神秘の泉を駆ける白龍
日本三大峡谷「清津峡」
新潟県十日町市にある清津峡は黒部峡谷・大杉谷とともに日本三大峡谷に数えられている景勝地で、国の天然記念物に指定されています。
新潟県十日町市「清津峡」日本三大峡谷のV字谷。〜聳え立つ柱状節理の岩壁
首都圏から関越自動車道を使い、津南町経由で秋山郷に向かう場合、石打と津南を結ぶ国道353号から少し入った所に清津峡はあります。