鬼怒川「龍王峡」 〜龍がのたうつ姿のような圧倒的な峡谷 紅葉の名所
龍王峡は2,200年ほど前、海底火山によって造られた火山岩が、鬼怒川によって侵食されてできた峡谷です。川の両岸に迫る絶壁・2つの橋から見ることができる絶景・滝・奇岩と、峡谷の中を探検しているような気分になる遊歩道になっています。紅葉の時期は特に美しく、観光地として人気が高いスポットです。今回は夏の峡谷を散策してきました。
龍王峡へのアクセス・駐車場
龍王峡は鬼怒川温泉街の北に位置しています。鬼怒川の温泉街付近から国道121号を北上すると左側に龍王峡の駐車場があります。電車でのアクセスは東京・浅草駅から東武特急で2時間半ほどです。「龍王峡駅」は駐車場と隣接しているので、電車を降りてすぐに龍王峡の散策を楽しむことができます。
龍王峡の駐車場は日光市営となっているため駐車料金は無料です。駐車台数は100台ほどになっています。駐車料金が無料なのは嬉しいですね。
「龍王峡の案内板」
龍王峡は鬼怒川温泉と川治温泉の間にあり、険しい峡谷が約3kmほど続いています。紫竜峡、青竜峡、白竜峡の3つのエリアがあり遊歩道が整備されています。全てを歩くと2kmで片道1時間程度の行程になります。
写真撮影の場合は「白竜峡」がオススメで、駐車場から「むささび橋」の少し先の「大観」までを歩くのが良いでしょう。この区間に虹見の滝、五龍王神社、2つの橋など、ビューポイントが集中しています。白竜峡だけでも写真を撮影しながらの場合、3時間程度はかかると思います。
駐車場の横にはお土産屋が並んでいます。この前を通って写真の左奥から遊歩道に入ります。
龍王峡のハイキングマップ(案内板)
遊歩道に入る前にもう一度、ルートを確認しましょう。
遊歩道の入口は鳥居になっています。
鳥居を入って右方向に進みます。お土産屋の裏を通る感じになっていました。
舗装されたスロープになっています。
むささび橋方向にいく場合、「虹見橋」を渡って川の対岸を歩いて「むささび橋」まで行くルートがオススメです。こちらのルートの方が景観が良いです。
ここは右側に進みます。
ここから虹見橋まではずっと下りになります。かなり高低差があるので、帰ってくる人たちは急登で大変そうでした。
つづら折りの階段が始まります。
一人が通れるほどの幅で、すれ違うときは少し横に避ける必要があります。
少し下に小さな橋が見えてきました。
虹見の滝が見えます。
巨大な岩盤から飛び出すような形の滝。
奥には鬼怒川の流れ、そしてその上には虹見橋が見えます。
龍王峡遊歩道のひとつ目の見所になります。
五龍王神社です。虹見の滝と谷を挟んだ対岸に位置しています。
「虹見の滝」案内板
正面の滝は虹見の滝です。滝のある野沢は角閃輝石閃緑玢岩(かくせんざせきせんりょくひんがん)という火山岩の岩脈からできていて硬い岩石ですが、本流の鬼怒川は流紋岩でそれほど硬くありません。
その上、本流の鬼怒川は水量が多く、侵食作用が大きいことから合流点で河床の高さに差ができて滝になったものです。このような滝を懸谷と名付けています。
五龍王神社の少し手前から鬼怒川まで降りて行く道があります。虹見橋を下から見ることができ、鬼怒川の峡谷を近くで感じられる場所なので、こちらまで足を運んで見ると良いと思います。
手すりの設けられた道です。
エメラルドグリーンの鬼怒川の流れが見えてきました。
川岸にたどり着くと美しい水がゆっくりと流れています。
ここは流れが穏やかです。
川岸はひろくなっており、岩の上で休んだりすることができました。この写真は下流方向を撮影しています。画面右側手前に見える岩には簡単に渡ることができ、上流側を撮影するのに良い場所でした。
上流側を撮影。
虹見橋を入れないで撮影すると迫力ある峡谷の写真に。
今度は虹見橋を入れて撮影。
峡谷と橋のバランスが良いです。観光客は橋の上から眺めを楽しむので、人の多いときは橋の上に人が居なくなるチャンスは少ないと思います。
この日も橋の上に人が居なくなるまで、だいぶ待ちました。
望遠レンズでさらに岩を大きく撮影。
臨場感が出ます。
真夏の撮影だったので、周囲の木々を多めに入れてみました。
下流側の奥では川がカーブしています。
河原での撮影を終えたら、来た道を登り神社付近まで戻ります。この写真はメインルートから神社へと向かう分岐の部分で撮影しました。
階段を降りてまっすぐ行くと神社。右に見えるのが虹見の滝、左にある階段が河原へと下りる遊歩道になっています。
メインのルートに戻り先に進みます。
木製の橋を渡ります。
虹見橋の分岐です。写真撮影には橋を渡り、対岸の遊歩道を歩いて、むささび橋に向かうルートが良いです。
※虹見橋を渡る前に40mほどの距離に竪琴の滝があるので、そちらを見てから虹見橋に行くのも良いと思います。(今回は竪琴の滝には行きませんでした)
虹見橋
遊歩道から階段を降りて行くと橋に出ます。
龍王峡ひとつめの絶景ポイントです。
虹見橋から下流を望む。
虹見橋から上流を望む。
奥には小さくですが「むささび橋」が見えます。
虹見橋から望む、虹見の滝と神社。
先ほどはあの神社あたりにいました。
上流方向を空を入れて撮影。
橋の上からはこのような景観が見えます。空を入れるか、入れないかで峡谷の迫力がかなり変わるので、龍王峡に撮影に行くときは、標準レンズ、望遠レンズの2つを持って行くと良いと思います。広角レンズはあまり使うところは無い気がしました。
橋の上から望遠レンズで撮影すると、竜の通り道のような迫力のある写真に。
岩の白い部分と茶色い部分が混在しているので立体感のある写真になります。
橋の上から虹見の滝を見ると、大きな岩の上で滝が跳ねているのがわかります。
高速シャッター・スローシャッターのどちらでも絵になる滝だと思います。
日中、太陽の光が強かったので高速シャッターで爽快な滝の写真にしました。
縦構図で収まりの良い滝です。
橋の上からむささび橋(上流)方向を見ると右側にも滝が見えます。
遊歩道の横からこの滝を近くで撮影できる場所がありますので、後ほどその場所を紹介します。
虹見橋を渡ると階段になります。
階段を登ると板張りの通路に変わります。
川からはかなりの高さがあり、下を覗き込むと怖いほどです。観光地の遊歩道ですが、油断すると転落もあるので気をつけて歩きましょう。
上記の写真を撮影した橋。
幅は一人が歩けるほどです。
木道と階段が続きます。
遊歩道の途中から滝が見えてきました。先ほど虹見橋から見えた滝です。
遊歩道から少しそれたところに滝の撮影ポイントがあります。
階段を下ったところに倒れかけたような木の根があります。
ここの右側の崖の方に向かうと展望スペースになります。
このような感じになっており、ここの先端まで行くことができます。
あまり前に行き過ぎると転落の可能性があるので、気をつけて撮影しましょう。
滝の撮影ポイントから遊歩道に戻ります。
少し開けた空間になりました。林の中の気持ちの良い道です。
むささび橋まで400mとなりました。所々に距離が書いてあるので歩いて安心感があります。
問題が起きて救助を呼ぶ時は案内板の上の番号を言えば、レスキュー隊が場所を特定できるようになっています。
途中、休憩スペース(ベンチ)が設置されています。
岩の上を歩くような場所もあります。
むささび橋に近づくと木道になります。
むささび橋が見えてきました。橋の入口右側にはベンチとテーブルが設置されていて休憩することができます。
「岩の分類」
この付近の青っぽい色をした岩は凝灰岩です。岩石はその成因によって火成岩、変成岩、堆積岩の3種類に分類されています。
凝灰岩は火山爆発の時の火山灰などが堆積してできたので堆積岩にはいります。これに対して、下流の流紋岩や、上流に見られる安山岩は、火山活動のときの噴出物(マグマ)が固まってできたので、火成岩にはいります。
(案内板より)
むささび橋
虹見橋からゆっくり撮影しながら1時間ほどするとむささび橋に到着しました。(撮影無しのハイキングだと20〜30分程度です)
傾斜はあまり無い区間なので歩くのは楽でした。
むささび橋から上流はさらに険しい断崖になっています。ここは本当に竜がのたうちまわってできたような断崖絶壁になっています。
むささび橋は鉄製の吊橋で多少揺れを感じる程度でした。他の人が渡ってくると三脚が揺れるので、人が渡って来ない間にシャッターを切りました。
真夏の平日で人が少ない時でしたが、紅葉シーズンは大変そうです。
縦構図で撮影。
横構図より奥行き感と迫力が増します。
北西方向を撮影しています。早朝・夕暮れ時よりは日中のトップライトに近い方が露出差が無く撮影しやすいと感じました。斜光になると左右どちらかの岩壁が影になります。
むささび橋から虹見橋方向を望む。
奥に虹見橋が見えます。この写真の右側を歩いてきました。
売店
むささび橋には売店がありました。ドリンクなどを販売しているので、お店の前のベンチ・テーブルで休憩することができます。
むささび橋を渡り右に行くと駐車場方向に戻ります。左に行くとさらに奇岩などがあるので、左に行くことにしました。(この先に「大観」というビュースポットもあります)
階段を登ると公衆トイレがありました。
トイレを過ぎると少し山道のような感じになってきます。
数分歩くと大観という案内板がありました。
少し降りて行くと広いスペースがあり、展望所になっています。岩の平らなところにロープが張られてている感じでした。
大観
龍王峡のみどころのひとつ「大観」。
竜の通り道のような場所なので、縦構図もいいですね。
「大谷緑色凝灰岩」
むささび橋付近から上流は青竜峡と呼ばれていますが、それはこの付近が大谷緑色凝灰岩でできていて、岩の色が緑色をしているからです。
これは今から約2200年前の海底火山の爆発で流紋岩が噴出した時の火山灰が堆積してできたものです。
何回もの火山活動による噴出物が重なったため、その厚さは数百メートルにもなっています。
この岩は宇都宮の大谷で取れる大谷石と同質のものです。大谷石は石塀や石壁などの建築材料として有名です。
(案内板より)
まだ新しさの残る橋です。
遊歩道を歩いていると左に五光岩という標識がありました。木の枝が伸びているのであまりよく見えません。
「五光岩」
目の下の川床に見られる直径10Mくらいの大きい岩塊が五光岩です。この岩の下部は、流水の洗堀によって大きくえぐられており、真中にぽっかりと穴があいています。
この岩は、火山灰が堆積してできた凝灰岩でできているので岩質が硬軟不均一です。そのため、河川の流水による侵食の度合いに差ができて、このような形をした洞門が出来上がりました。
かつては穴の中に水が溜まり、天候の状態などで五色の光に変化して見えたそうですが、現在では見られません。
(案内板より)
「柱状節理」
緑色凝灰岩を貫いた岩脈の一種である玢岩が歩道沿いにみられ、柱状節理がよく発達しています。ちょうど材木を立てたような形をしているため材木岩と呼ばれています。
これは地球の内部マグマが上昇してきて、地下の浅いところで冷却され固まる時に収縮してできたものです。多角形の柱状をしており六角形のものが最も多くみられます。
(案内板より)
「兎(と)はね」
この付近の河床は巾4mくらいの狭い廊下状になっていて、兎が跳ねて渡れるくらいなので、兎はねと呼ばれています。
この辺りは緑色凝灰岩の分布する青竜峡の最上流になっていますが、地層的にみると緑色凝灰岩の層の一番下層にあたり、基底礫岩からできているので岩質が硬くそのため河川の侵食による下刻作用に耐えて、このような地形になりました。
(案内板より)
兎はねへの道。
遊歩道から少し下ります。
川幅の狭くなっている「兎はね」
歩いて渡れそうなほど、狭い川幅になっています。
むささび橋から500m地点。
「かめ穴」
対岸は安山岩でできている岩石段丘ですが、その断崖を見ると、河川水位から1mくらい上にかめ穴(おう穴、大釜とも呼ばれる)がみられます。下流の流紋岩の中のかめ穴は断崖の中段にあるのにここでは水面近くにあるのはなぜでしょう?もし、かめ穴ができた年代が同じだたとすると、ここの安山岩よりも下流の下刻作用がより早く進んだことが考えられます。
(案内板より)
展望場所手前の木々の枝と葉に隠れて見にくいですが、岩に開いた穴を見ることができました。
この区間の遊歩道は近年リニューアルされたようです。まだ新しい木の手すりです。
この先はあまり見所がなさそうだったので、ここで引き返すことにしました。
まずは、むささび橋まで戻ります。
むささび橋からの帰路
帰りは川の反対側を歩くことにしました。むささび橋のお店の人も帰るところだったようで話を聞いたところ、こちら側のルートで帰ると最後の急登がないので楽だということでした。
むささび橋の売店から川を右手に見て歩いていきます。(実際には川から少し離れた林の中を歩く感じです)
途中、むささび橋、虹見橋の標識がありました。
この道を歩いて行くと用水路のようなところを渡ることになります。
用水路の橋を渡ると少し登りになりますが、傾斜は緩やかです。
道は整備されており綺麗です。
階段が見えてきました。下は会津鬼怒川線の線路になっています。
階段からは龍王峡駅のホームが見えます。
ゴールまでもう少し。
階段を超えると上に道路の橋が見えてきます。
道なりに進みます。
平屋の建物の横を通ります。
伊ノ原自治公民館に出てきました。先ほどの建物は公民館だったようです。
国道121号に出ました。
数十メートルで龍王峡の駐車場です。
このルートは虹見橋から駐車場までの急登を登る必要がないので、とても楽です。帰りは国道・線路側の遊歩道を歩いて帰ってくることをオススメします。